英語の音が聞き取れない原因と、英語耳の作り方 LとRが同じに聞こえるのは、耳が赤ちゃんのころに日本語に合わせて育ったから。大人になってからでも、耳は鍛え直せます。
light と right、berry と very、think と sink、hat と hut。英語を学んでいて、どうしても同じに聞こえる単語はありませんか。この記事は、そんな英語学習者と、その理由を説明したい先生のための記事です。
結論から言うと、音はちゃんと耳に届いています。日本語で育った脳が、どの違いが大事かを覚えていて、英語の2つの音を日本語のひとつの音にまとめてしまうのです。この仕組みは赤ちゃんのころにできますが、一生そのままではありません。ここでは、仕組みがどうできるのか、日本人の耳でまとまりやすい英語の音はどれか、そして研究で効果が確かめられた練習法を紹介します。
この記事のポイント
- light と right が同じに聞こえても、耳が悪いわけではありません。英語の2つの音を、脳が日本語のひとつの音として受け取っているのです。
- この受け取り方は、生後1年のうちに決まります。生後6〜8か月では、日本とアメリカの赤ちゃんは英語のRとLを同じくらい聞き分けられます。それが10〜12か月になると、アメリカの赤ちゃんは聞き分けが上達し、日本の赤ちゃんは下がっていました(Kuhlら 2006年)。
- 大人でも鍛え直せます。方法は HVPT(高変動音声訓練)です。たくさんの声で単語をひとつ聞き、2つの単語のどちらだったかを選びます。79の研究をまとめた2025年のメタ分析では、中〜大きな効果が確認されています。
- 効果は長く続き、発音にも広がります。日本人の学習者は、練習をやめて6か月たっても練習前より4.5%高い正答率を保っていました(Livelyら 1994年)。聞く練習だけで、RとLの発音も良くなっています(Bradlowら 1997年)。
英語が聞き取れない原因は、日本語の「音の箱」
どの言語にも、決まった数の「音の箱」があります。日本語の母音は「アイウエオ」の5つですが、英語にはたいてい10以上あります。英語のLとRにあたる音も、日本語では舌先を軽くはじくラ行の音ひとつです。
音を聞くとき、脳は細かい違いをすべて覚えてはいません。その音がどの箱に入るかをすばやく決めて、次へ進みます。母語を楽に速く聞き取れるのは、この仕組みのおかげです。ところが英語の2つの音が日本語の同じ箱に入ると、出てくるときにはひとつの音になってしまいます。
これを「知覚同化」と呼びます。Strangeらの研究(1996年)では、日本人の聞き手がアメリカ英語の母音を日本語の5つの母音に当てはめ、英語の2つ、3つの母音をひとつの日本語の母音にまとめることが多いとわかりました。
つまり、これは耳の聞こえの問題ではなく、聴力検査ではわかりません。音の分け方の問題で、分け方は練習で変えられます。
LとRが同じに聞こえるのはなぜ?耳は1歳までに母語に合わせて育つ
赤ちゃんは、どの言語の音の違いも聞き分けられる状態で生まれてきます。WerkerとTeesの有名な研究(1984年)では、英語圏の赤ちゃんは生後6〜8か月ならヒンディー語やカナダ先住民の言語(セイリッシュ語族)の子音を聞き分けられましたが、10〜12か月になるとほとんどの子ができなくなっていました。
Kuhlらの研究(2006年)は、英語のRとLをアメリカと日本の赤ちゃんで直接くらべました。生後6〜8か月では、どちらも同じくらい聞き分けられました。それが10〜12か月になると、アメリカの赤ちゃんは聞き分けが上達し、日本の赤ちゃんは下がっていました。同じ数か月のあいだに、まわりで話される言語の音はよりはっきり聞こえるようになり、それ以外の音の違いは聞こえにくくなっていくのです。
大人になると、この影響はかなり強くなります。Gotoの研究(1971年)では、日本人の大人は英語のLとRを耳で聞き分けるのがとても難しいことが示されました。英語のつづりを知っていても変わらないのは、音の仕分けが意識する前に起きているからです。
日本人の耳で同じに聞こえやすい英語の音
下の表の1行が、英語の2つ以上の音がまとまってしまう日本語の音です。ペアのページには単語の一覧があり、ネイティブのいろいろな声で聞けます。
| 日本語の音 | 英語の音 | 例 | 練習 |
|---|---|---|---|
| ラ行 | LとR | light · right | LとR |
| バ行 | BとV | berry · very | BとV |
| サ行・ザ行 | TH・S・Z | think · sink、then · Zen | THとS、THとZ |
| シ | SとSH | seat · sheet | SとSH |
| フ・ホ | FとH | fall · hall | FとH |
| ン | NとNG | thin · thing | NとNG |
| ア | æ・ʌ・ɑ | hat · hut · hot | 英語の母音ガイド |
| アー | ɜː・ɑː・ɔː | heard · hard、work · walk | heard と hard、work と walk |
| イ・ウ | 長い・短いイとウ | seat · sit、pool · pull | seat と sit、pool と pull |
韓国語にも、英語のLとRにあたる音はひとつしかありません。ほかの言語を話す人には、また別の苦手なペアがあります。どのペアが難しいかは、母語にどんな「音の箱」があるかで決まるのです。
実際に聞いてみよう
再生して、聞こえた単語を選んでください。どれもアプリで使っている実際の音声で、毎回ちがう声で流れます。
アプリと同じ音声です。音を出してお試しください。
まちがえても、不注意のせいではありません。音がまとまって聞こえている証拠です。無料の聞き分けテストなら、LとR、BとV、THとSを数分でチェックできます。
大人の英語耳の作り方:HVPT(高変動音声訓練)
いちばん研究の裏づけがある方法が、HVPT(High Variability Phonetic Training、高変動音声訓練)です。1990年代のはじめに、日本人の学習者が英語のRとLを聞き分けられるようにするために作られました(Loganら 1991年)。やり方はこうです。
- 単語をひとつ聞きます(たとえば right)。
- light と right のどちらだったかを選びます。
- すぐに正解かどうかがわかります。
- 次の単語は別の声で流れます。男性と女性、若い人と年配の人、アメリカ・イギリス・オーストラリアの話者です。
大事なのは、たくさんの声で聞くことです。LやRの音は、話す人によって少しずつちがいます。Livelyらの研究(1993年)では、ひとりの声だけで練習した学習者は上達したものの、新しい声には効果が広がりませんでした。いろいろな声で聞くと、脳はどの声にも共通する違いを探すようになります。
この30年で、研究の裏づけは増えてきました。Thomson(2018年)は32のHVPT研究をまとめ、とても効果的な練習法で、効果も長く続くと結論づけています。Uchihara、Karas、Thomsonによる2025年のメタ分析は79の研究をまとめ、聞き取りに中〜大きな効果(練習前後の効果量 g = 0.92)があったと報告しています。効果は時間がたっても続き、練習していない単語にもある程度広がっていました。
学習者にとって特に大事な結果が2つあります。ひとつは、効果が続くこと。Livelyらの研究(1994年)では、日本人の学習者が3週間練習し、3か月後も正答率は2%しか下がらず、6か月後も練習前より4.5%高いままでした。もうひとつは、発音にも効くこと。Bradlowらの研究(1997年)では、聞く練習しかしていないのに、ネイティブの聞き手による評価でRとLの発音が良くなっていました。
研究にもとづく、英語耳を鍛える練習のしかた
- 英語のすべての音ではなく、日本語でまとまってしまうペアを練習します。上の表がそのリストです。
- ひとりの先生やひとつのポッドキャストではなく、たくさんの声で聞きます。
- 答え合わせはその場で。単語が耳に残っているうちに確かめます。
- 1回は短く、こまめに続けます。週に1回長くやるより、ほぼ毎日数分のほうが続けやすくなります。
- 音がいちばん聞き取りやすい語頭のペア(light · right)から始め、子音の連続(play · pray)、語中や語末(collect · correct)へ進みます。
- 発音できるようになるまで待つ必要はありません。まず聞き分けられるようになると、発音もあとからついてくることが多いのです。
上達のペースには個人差があります。人とくらべるより、自分の前のスコアとくらべましょう。
TellApart はこの方法にもとづいて作られています。ネイティブのいろいろな声で単語をひとつ聞き、2つの単語のどちらだったかをタップするだけ。レベルも同じ順番で、語頭から子音の連続、語中と語末へ進みます。
音以外の原因もある
英語が聞き取れない原因は、音の聞き分けだけではありません。単語をひとつずつ言われればわかるのに文になると聞き取れないなら、話すスピード、単語と単語がつながって聞こえること(リエゾン)、知らない単語のほうが大きな原因です。音の聞き分けはその土台になりますが、実際の英語をたくさん聞くことも欠かせません。
よくある質問
大人になってからでもLとRは聞き分けられるようになりますか?
はい。1991年以降の研究で、日本人の大人の学習者が HVPT で英語のRとLの聞き分けを練習し、上達しています。効果は新しい単語や声にも広がり、ある研究では練習をやめて6か月たっても残っていました。
なぜ日本人はLとRが同じに聞こえるのですか?
英語ではLとRの2つの音が、日本語ではラ行の音ひとつだからです。日本の赤ちゃんの耳は生後1年のうちにこの音に合わせて育つので、大人になると英語のLもRもラ行として受け取ります。音は聞こえていても、同じ箱に入れているのです。
聞き取りの練習で発音も良くなりますか?
良くなることが多いです。Bradlowらの研究(1997年)では、日本人の学習者がRとLの聞き取り練習だけをしたところ、ネイティブの聞き手による評価で発音も良くなっていました。違いが聞こえれば、自分の発音が合っているかも確かめられます。
どのくらいで聞き分けられるようになりますか?
個人差があります。Livelyらの研究(1994年)では、日本人の学習者が3週間練習しました。3か月後も正答率は2%しか下がらず、6か月後も練習前より高いままでした。
参考文献
- Cross-language speech perception: Evidence for perceptual reorganization during the first year of lifeWerker & Tees · Infant Behavior and Development · 1984
- Infants show a facilitation effect for native language phonetic perception between 6 and 12 monthsKuhl, Stevens, Hayashi, Deguchi, Kiritani & Iverson · Developmental Science · 2006
- Auditory perception by normal Japanese adults of the sounds “L” and “R”Goto · Neuropsychologia · 1971
- Perceptual assimilation of american English vowels by Japanese listenersStrange, Akahane-Yamada, Fitzgerald & Kubo · ICSLP · 1996
- Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first reportLogan, Lively & Pisoni · JASA · 1991
- Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. II: The role of phonetic environment and talker variability in learning new perceptual categoriesLively, Logan & Pisoni · JASA · 1993
- Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. III. Long-term retention of new phonetic categoriesLively, Pisoni, Yamada et al. · JASA · 1994
- Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech productionBradlow, Pisoni, Akahane-Yamada & Tohkura · JASA · 1997
- High Variability [Pronunciation] Training (HVPT)Thomson · Journal of Second Language Pronunciation · 2018
- High variability phonetic training (HVPT): A meta-analysis of L2 perceptual training studiesUchihara, Karas & Thomson · Studies in Second Language Acquisition · 2025