英語の聞き流しは効果ない?研究でわかったことと、効果のある聞き方 英語を流しておくだけで、耳が慣れていく気がします。でも、日本語でまとまってしまう音については、研究は別の答えを出しています。
通勤中や家事の合間、寝る前に、英語のポッドキャストやYouTube、音楽を流している人は多いと思います。この記事は、何か月も聞き流しを続けているのに、light と right、berry と very がまだ同じに聞こえる人のための記事です。
結論から言うと、日本語でまとまってしまう音については、聞き流しだけでは研究の裏づけがある方法とは言えません。ここでは、赤ちゃんからアメリカに10年以上住む大人までを調べた3つの研究で、その理由と、効果があった聞き方を紹介します。
この記事のポイント
- LとRのように日本語でまとまってしまう音は、下で紹介する研究では、聞き流すだけではほとんど聞き分けられるようになりませんでした。差が出たのは、答えを選んで、その場で正解がわかる練習です。
- 赤ちゃんでさえ、録音からは新しい音を覚えませんでした。生後9か月のアメリカの赤ちゃんは、中国語を話す人と直接12回ふれあうと中国語の音を聞き分けられるようになりましたが、同じ内容を映像や音声で見聞きしたグループは変わりませんでした(Kuhlら 2003年)。
- 英語圏に長く住んでも、それだけでは足りません。アメリカに12年以上住む日本人は、来たばかりの人よりRとLを聞き分けられましたが、ネイティブにはおよびませんでした(TakagiとMann 1995年)。
- 決め手は答え合わせでした。難しいRとLの単語を3日間、答え合わせなしで聞いた日本人の大人は上達しませんでしたが、答え合わせをつけると、はっきり上達しました(McCandlissら 2002年)。
- 聞き流しにも役割はあります。英語の速さやリズムに慣れること、知っている単語が使われるのを聞くことです。1日数分の、答え合わせのある聞き分け練習と組み合わせましょう。
聞き流しで、まとまった音が聞き分けられない理由
英語の2つの音が日本語のひとつの音に入ってしまうと、脳は聞こえたと意識する前に、2つを同じ箱に入れてしまいます。くわしくは「英語の音が聞き取れない原因と、英語耳の作り方」で説明しています。
聞き流しは、この仕組みとまともにぶつかります。right を聞くたびに、耳は light と同じ箱に入れ、まちがっていると教えてくれるものは何もありません。何時間聞いても、直したいはずのクセを脳が練習し続けることになるのです。
仕分け方を変えるには、2つの音がちがうというサインが脳に必要です。研究でわかっているのは、そのサインの出し方が2つあること。人と直接やりとりすること、そして自分の答えを確かめられることです。
赤ちゃんでさえ、録音からは学ばなかった
聞き流しで学べる人がいるとしたら、まわりの音に合わせて耳が育っている最中の赤ちゃんのはずです。Kuhl、Tsao、Liuの研究(2003年)は、生後9か月のアメリカの赤ちゃんで、英語にはない中国語の音の区別を使ってこれを調べました。
- あるグループは、中国語を話す人と12回、一緒に遊んだり絵本を読んでもらったりしました。そのあと、英語だけを聞いていた赤ちゃんより中国語の音を聞き分けられるようになりました。
- 別のグループは、同じ中国語の内容を映像か音声の録音で見聞きしました。こちらは、測れるほどの変化がありませんでした。
研究者たちは、この時期に音を覚えるには、ただ音を聞くだけでなく、人と直接やりとりすることが大事だと結論づけています。子どもに英語を聞き流しさせている親にとっても、参考になる結果です。英語の音声を流しておくことは、英語を話す人と過ごすこととは同じではありません。ただしこれは赤ちゃんの研究なので、もっと大きな子どもがどう学ぶかまではわかりません。
アメリカに12年住んでも、それだけでは足りなかった
英語圏で暮らすことは、聞き流しよりずっと多くの英語にふれることです。一日中英語を聞き、生活のためにも英語が必要になります。TakagiとMannの研究(1995年)は、それで日本人の大人がRとLをどこまで聞き分けられるようになるかを調べました。
くらべたのは12人ずつの3グループです。英語のネイティブ、アメリカに12年以上住んでいる日本人、そして来て1年未満の日本人です。長く住んでいる人たちは、来たばかりの人よりRとLを聞き分けられましたが、ネイティブにはおよびませんでした。
研究者たちは、長く英語にふれれば聞き取りは良くなるかもしれないが、完全に聞き分けられるとはかぎらない、とまとめています。10年英語の中で暮らしても足りないのなら、BGMとして流すだけではなおさらです。
差をつけたのは「答え合わせ」だった
McCandlissらの研究(2002年)では、日本人の大人が rock と lock のようなペアで英語のRとLを聞き分ける練習をしました。変えたのは2つ。答えが合っているかを教えるかどうかと、音の難しさです。
| 練習(3日間) | 答え合わせなし | 答え合わせあり |
|---|---|---|
| 難しいRとLの単語を、毎回同じ音で | 練習しなかった人と変わらない | はっきり上達 |
| 最初はRとLを大げさにして、少しずつ難しく | はっきり上達 | はっきり上達 |
いちばん聞き流しに近いのは左上です。難しい音をくり返し聞くだけで、自分で確かめる方法がありません。これでは効果がありませんでした。同じ音でも答え合わせをつけると上達し、その効果は新しい単語のペア(road と load)にも広がりました。
下の行からは、もうひとつのことがわかります。違いがいちばん聞き取りやすいところから始めると、上達しやすいのです。良い練習が聞き取りやすいペアから始めて、だんだん難しいペアへ進むのはこのためです。
答え合わせのある聞き方を試してみよう
答え合わせのある聞き方は、こんな感じです。再生して、聞こえた単語を選ぶと、すぐに正解かどうかがわかります。どれもアプリで使っている実際の音声で、毎回ちがう声で流れます。
アプリと同じ音声です。音を出してお試しください。
無料の聞き分けテストでは、LとR、BとV、THとSを同じやり方でチェックでき、どの音をもう聞き分けられているかがわかります。
効果のある聞き方:HVPT(高変動音声訓練)
研究の裏づけがいちばんある練習法は、上の2つの結果を組み合わせたものです。HVPT(高変動音声訓練)は、1990年代のはじめに、日本人の学習者が英語のRとLを聞き分けられるようにするために作られました(Loganら 1991年)。
- 単語をひとつ聞いて、2つの単語のどちらだったかを選びます。
- すぐに正解かどうかがわかります。
- 単語は毎回ちがう声で流れるので、ひとりの話し方のクセではなく、どの声にも共通する違いを覚えられます(Livelyら 1993年)。
79の研究をまとめた2025年のメタ分析では、聞き取りに中〜大きな効果が確認されています(Uchiharaら 2025年)。ある研究では、日本人の学習者が3週間練習し、6か月たっても練習前より高い正答率を保っていました(Livelyら 1994年)。くわしいしくみは前回の記事で紹介しています。
聞き流しが役に立つ場面と、シンプルな練習プラン
英語を聞くのをやめよう、という話ではありません。文が聞き取れない大きな原因には、話すスピード、単語がつながって聞こえること、知らない単語もあります。これには実際の英語をたくさん聞くしかなく、聞き流しはその時間をかせぐのにぴったりです。
コツは、聞き方ごとに役割を分けることです。
- 1日数分、答え合わせがあり、いろいろな声で聞ける聞き分け練習。日本語でまとまってしまう音のためです。ミニマルペア一覧にそのペアがまとまっています。
- ほとんど理解できる英語を、集中して聞く時間。聞き取れなかった文はくり返し聞き、スクリプトで確かめます。
- 残りの時間は聞き流し。英語の速さやリズムに慣れるためで、特定の音が聞き分けられるようになることは期待しません。
TellApart は、ひとつ目の練習のためのアプリです。ネイティブのいろいろな声で単語をひとつ聞き、2つの単語のどちらだったかをタップすると、すぐに正解がわかります。
よくある質問
英語の聞き流しは意味ないのですか?
まったく意味がないわけではありません。英語の速さやリズムに慣れたり、知っている単語が使われるのを聞いたりするのに役立ちます。ただ、LとRのように日本語でまとまってしまう音は、答え合わせなしで聞いても上達しにくいことが研究でわかっています。短い聞き分け練習と組み合わせましょう。
子どもに英語を聞き流しさせると効果がありますか?
期待するほどではないかもしれません。Kuhlらの研究(2003年)では、生後9か月の赤ちゃんは、中国語を話す人と直接ふれあうと中国語の音を覚えましたが、同じ内容の映像や音声からは覚えませんでした。英語の音声を流すより、英語を話す人と過ごすほうが効果が大きいと考えられます。
寝ながら英語を聞き流すと効果がありますか?
この記事で紹介した研究は、寝ているあいだの聞き流しを調べていないので、答えは出せません。わかっているのは、まとまった音の聞き分けがいちばん上達したのは、起きていて、答えを選び、その場で正解を確かめたときだということです。
聞き分けの練習はどのくらい必要ですか?
個人差があります。Livelyらの研究(1994年)では、日本人の学習者が3週間練習し、6か月たっても練習前より高い正答率を保っていました。長い練習をたまにするより、短い練習をこまめに続けるほうが続けやすくなります。
参考文献
- Foreign-language experience in infancy: Effects of short-term exposure and social interaction on phonetic learningKuhl, Tsao & Liu · Proceedings of the National Academy of Sciences · 2003
- The limits of extended naturalistic exposure on the perceptual mastery of English /r/ and /l/ by adult Japanese learners of EnglishTakagi & Mann · Applied Psycholinguistics · 1995
- Success and failure in teaching the [r]-[l] contrast to Japanese adults: Tests of a Hebbian model of plasticity and stabilization in spoken language perceptionMcCandliss, Fiez, Protopapas, Conway & McClelland · Cognitive, Affective, & Behavioral Neuroscience · 2002
- Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first reportLogan, Lively & Pisoni · JASA · 1991
- Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. II: The role of phonetic environment and talker variability in learning new perceptual categoriesLively, Logan & Pisoni · JASA · 1993
- Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. III. Long-term retention of new phonetic categoriesLively, Pisoni, Yamada et al. · JASA · 1994
- High variability phonetic training (HVPT): A meta-analysis of L2 perceptual training studiesUchihara, Karas & Thomson · Studies in Second Language Acquisition · 2025